2019.12.14 オフィス原状回復豆知識
オフィス原状回復ぼったくり被害の闇
ビルのオーナーは、オフィス・事務所・店舗などのテナントの賃貸を事業としているため、原状回復工事に関する知識が豊富です。
しかし、借主側はオフィスや店舗を借りることは事業のための手段なので、賃貸そのものについての専門的な知識がない場合が多いでしょう。
このような知識の差が、ぼったくりを招く原因となる場合があります。オーナーや業者は、原状回復の際に「借主は知識がないので、こちらから提案したものを全て受け入れるだろう」と考え、その弱みにつけこむからです。
過剰な表現に思えるかもしれませんが、ぼったくりとは、原状回復において適正価格以上の費用がかかったり、借主が本来の義務以上の内容を責任として負担させられたりすることを言います。
では、ぼったくりとは具体的にどのようなケースがあるのでしょうか。
原状回復のはずなのにグレードアップされている
そもそも原状回復とは「もとの状態に戻す」という意味なのですが、オーナーによって借りた当初の状態よりも更にグレードアップし、より良い状態に工事をしようと要求されている場合もあります。以下のような例があります。
・カーペットや壁紙の張り替えにおいて、入居時よりも品質と費用の高いものが指定される。
・普通便座であったトイレを、暖房便座や洗浄機能付きの便座に交換するよう要求される。
・旧型の蛍光灯が、高性能なLEDシーリングライトに取り換えさせられる。
このようなことが、借主側への説明や、特別に了承を得ることも一切なく、平然と原状回復工事の内容に盛り込まれていることがあります。
このようなグレードアップ工事は原状回復の域を超え、ぼったくりと言えます。
借主側がこのような点に気づきオーナー側へ確認すると、
「時代の流れに合った設備に交換する必要があるから」
「以前のものでは耐久性が低いことがわかったから」
などと説明を受けることもあるかもしれません。
しかし、もとの状態よりもきれいに、より良く工事をして新規募集をかけたいというのはオーナー側の都合でしかないのです。
このようなグレードアップの工事についてはオーナー側の負担で行うべきものであり、借主が負担する必要はありません。
どうしても原状回復工事を機にグレードアップをしたいのであれば、オーナー側が過剰分の費用を負担し、借主には原状回復の負担分の費用だけを請求するべきです。
借主が原状回復のついでにグレードアップ工事を負担させられることは、単なるぼったくりでしかありません。
原状回復の義務がある範囲はどこまでなのか
原状回復工事の際に行われるグレードアップについては、本来借主の義務ではないはずの負担を強いられており、ぼったくり以外のなにものでもありません。
原状回復の際に借主が行わなくてはいけないことは、故意や過失によって発生した消耗の修繕や、入居時に増設・移設など変更を加えた箇所を元に戻す事です。
自然に発生した経年劣化や通常消耗については、本来賃料の中に含まれているはずなので、原状回復時に費用を負担する必要はありません。
実は、原状回復の「もとの状態に戻す」という点では、入居時のそのままの状態にまで戻すという意味ですらないはずなのです。
もともと特約にそれらの修繕の義務が定められていれば話は別ですが、経年劣化や通常消耗について工事費用を求められることも一種のぼったくりと言えます。
ぼったくり を回避するために
世の中には貸主に言われるがまま同意し、必要以上に原状回復工事費用を支払っているのに、ぼったくりとは気づいていない事例がたくさんあります。
それらを洗い出して指摘することは、根拠のない値切り交渉やクレームとはわけが違います。
自分の負担するべき費用だけをきっちり支払うためには、工事の内容や必要性など詳細を明確にすることが大切です。